7月からハチやアブに刺されて受診される患者さんが多くなっています。
Q ハチに刺されるとなぜ危険なの? 初回なら大丈夫なの?
A ハチ毒の成分は、大きく分けて3つに分類できます。
① 活性アミン類(ヒスタミン,セロトニンなど)→腫れる、蕁麻疹を起こす。
② 発痛ペプチド類(メリチン,キニン類など)→ 痛みの原因となる。
③ 酵素類(ホスホリパーゼやヒアルロニダーゼなどのタンパク) →アレルギーを起こす。
俗に2回目以降蜂に刺されると危険、と信じられています。が、上記の成分によって、初めて刺されても、じんましんなどの全身症状が出ることがあります。多くの場合は、局所症状だけ(患部が腫れて痛む)で済みますが、3%程度でアナフィラキシーショックなどの緊急を要する全身症状が出現します。
ハチ刺症の被害は、繁殖期である7-10月に多く報告されております。内訳は、、、
7割 市街地でのアシナガバチ(もっとも多い)。
2割 山林、雑木林でのスズメバチ(林業、ダムやトンネル工事の作業員など)
1割 ミツバチ(主として養蜂業の方)
Q どういう人がアレルギー検査をした方がいいの?
A 今までハチに何度も刺されている方、あるいはこれから山の中で仕事をされる方、特に林業の方、養蜂業の方。
①スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの特異抗体(IgE抗体)をチェックできます。ハチに刺されると約20%で蜂毒特異的IgE抗体が産生されます。
②蜂毒アレルギーがあると、刺された人の約10-20%でアナフィラキシー症状を引き起こすといわれ、そのうちの一部はショックに至ります。
③ 林業・木材製造業従事者の約 40%、電気工事従事者の約 30%は、蜂に対するIgE 抗体が陽性であったとする報告があります (HayashiらAllergol Int 2014)。
④山間部の工事現場や森林で就業する方はあらかじめ「蜂アレルギー検査」をしておくとよいでしょう。
⑤就業のために蜂抗体があるか、ないか、の検査は健診と同様の扱いとなり、健康保険適応外となります。当院では8,800円で行っております。結果報告時の再診料も含みます。
結果によって、蜂抗体が陽性で、アナフィラキシー時への備えとして「エピペン」の処方を希望される場合は、健康保険での診療となります。
*企業様や官庁様で複数名をまとめて健診ご希望の際は、後日お振込み払いに対応いたしますので事務員にご相談ください。
⑥蜂に刺された後、アレルギー検査として行う場合は、通常の保険診療となります。刺されてから抗体がついているか検査するタイミングとしては、2週間以上あけてから採血すると正確な値となります。また、刺されてから時間がたってくると(年の単位)抗体の力価が低減してくる傾向があります。
Q ハチの種類が違えば、大丈夫か?
A ハチの種類によっては交差反応といって、ハチ毒のアレルゲンの構造が似ているため、種類の違う蜂にさされても、同じ反応が起きることがあります。一般に、スズメバチとアシナガバチは交差反応があります。一方、スズメバチとミツバチは交差反応が少ないです。
Q 毒針が残っているようだけど大丈夫?
A ハチの毒針はミツバチで残りやすいものの、スズメバチやアシナガバチではまれです。当院では、デルモスコピー診にて、蜂の針が残っていないか確認をしています。
Q 治療は?
刺された部位以外にじんましんを含む全身症状が出現している場合は、すぐに総合病院を受診してください。局所の腫れと痛みは、皮膚科医専門医を受診してください。アナフィラキシーが心配なときは救急車を要請してください。ハチによる即時型反応はすぐ悪化します。
また、林業など、再び刺されるリスクの高い方、アナフィラキシーショックの経験者などでは自己での応急処置薬であるエピペンの処方(保険適応)を検討します。当院でもエピペンの処方が可能です
Q ハチさされを予防するための注意は?
A 下記の論文から引用させていただきます。
平田 博国 石井 芳 獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー)
蜂毒アレルギーの臨床 アレルギー免疫治療の最新の進歩
Dokkyo Journal of Medical Sciences
41(3):295〜306,2014
生活指導
一般的な蜂刺傷をさける方法について,以下の様に提
唱されている.
- 蜂の巣に近づかない.
- 家屋内に営巣させないために穴をふさぐ.
- 肌に密着する衣類を着て,服の下に蜂が入らない
ようにする. - 白っぽい服を着る.
- 花模様のある服や黒い服を避ける.
- 芳香のある化粧品を避ける.
- 戸外で甘味物を食べない.
- 自動車の窓を開けっ放しにしない.
- 洗濯物や布団を取り込むとき,蜂を紛れ込ませな
い. - 不必要な時に,藪の中に入ったりしない.
- 見張り役の蜂を見かければ,巣が近いことを知る.
- 蜂を追い払う(殺虫剤やスプレーなど含む)行動
は興奮を招くので決して行ってはならない. - 蜂を見かけた場合,顔を下に向き加減に静止し,
蜂が去ってから静かに退避する.