虫に刺されると「ダニに刺されたのでは?」と心配になります。はっきりとダニと断定できるケースは少ないですが、皮膚症状の分布や、形から推定します。

わたしたち皮膚科医が取り扱う皮膚病と関係した「ダニ」について整理してみました。

コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ(チリダニ科)
・室内のダニとして最も多く、ヒトのフケやアカやカビなどの微細な破片を食べる。
・肉眼では見えないサイズ。
・直接人を刺すことはない。
・喘息やアレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患の原因となる。アトピー性皮膚炎とも深く関係する。
・血液検査によって、抗体検査ができる。
・舌下免疫療法によって、耐性誘導ができるようになった。
・高温多湿の環境で増える。湿度と気温の高い、梅雨の家屋で繁殖する。
・お好み焼き粉やホットケーキミックスを開封後、コナヒョウヒダニが入り込んで増えることがあり、アレルギーのある方が摂取してアナフィラキシーを起こす事例がある。(小麦アレルギーと区別するため、小麦のIgE抗体とコナヒョウヒダニのIgE抗体を両方測定して区別。)
・家屋では、寝具に最も多い。寝具を防ダニシーツや布団カバー(例えばミクロガード®)でくるむのも有効。


ツメダニ
・家屋にいて、自分(0.5mm)より小型のダニやカビを食べるが、増えると偶発的に人を刺す。
・①のようなダニを捕食するので、①が増える環境下でツメダニも増える。
・カビも食べる。築浅でカビの生えたタタミなど。
・殺虫剤が効かず、対策は①を減らすこと。掃除機。湿度管理。
・症状は体の柔らかいところに、赤い粒(丘疹)が発症して非常にかゆいが、アレルギー反応なので、個人差がある=かゆみがでない人もある。


イエダニ、トリサシダニ
・体の柔らかいところに赤い粒々が生じてかゆい。
・イエダニはネズミに寄生するので、近年ネズミの巣が家屋にあることが少なくなっており問題となるケースが少なくなっている。トリサシダニは家屋に巣くった野鳥の巣から這い出してきて人を刺すケースがあり。


マダニ
・屋外のレジャーや山菜取りなどで刺され、皮膚に喰いつく。肉眼で見えるサイズ。


ニキビダニ
・皮膚の脂腺で生活している。顔の疾患である「酒さ」と関連。患部で増殖しており、膿みをもった粒を皮膚科医がピンセットでつまんで顕微鏡でみると、独特の形の微生物として確認される。「毛包虫」と同義。

ヒゼンダニ

疥癬虫と同義。人の皮膚に寄生し、人から人に感染する。近年は介護現場や学校での集団発生が問題となる。夜間を中心に激しいかゆみに悩まされる。患部の皮膚をつまんで顕微鏡で確認し、虫卵や虫体を確認して診断する。内服薬や外用剤の特効薬がある。