疥癬は疥癬虫(ヒゼンダニ)の皮膚への感染により発疹を生じ、非常にかゆいのが特徴です。

人から人へ感染し、近ごろ、介護現場でのまん延が問題となっています。

現在では効果の高い内服薬(イベルメクチン)が使用され、比較的容易に治療できるようになっています。

(イベルメクチンは本年のノーベル医学生理学賞を受賞された大村博士が発見されたエバーメクチンが基になっています。身近なところで大村先生の恩恵にあずかっていたのですね)。

さらにその後、塗り薬であるスミスリンローションも使用できるようになり、治療の選択肢が広がっています。

まん延を防ぐためには、医師の確実な診断が大切です。

手順としては、皮疹を観察し、疑わしいポツポツをピンセットでつまんで、顕微鏡で虫や卵を確認します。手の甲などの皮膚には、疥癬の進路に生じた‘疥癬トンネル’がみつかることがあり、拡大鏡でみると、先端に疥癬虫が確認されます。

手に見られた疥癬トンネルをダーモスコピーで観察。

手に見られた疥癬トンネルをダーモスコピーで観察。


最先端部に”虫”が見られ、そこを摘まんで顕微鏡で観察。

最先端部に”虫”が見られ、そこを摘まんで顕微鏡で観察。

さて、疥癬の症状によるパターンとして、通常型と角化型がみられ、その対応はまったく異なります。

一般的にみられる疥癬は通常型で、寄生しているダニの数が1000匹程度で、それほど感染力が強くありません。それに対し、角化型は、主に免疫低下状態の患者に100万匹以上ものダニが寄生し、手足の角質がとても厚くなる特異な所見がみられます。そうなると患者から落ちた垢(落屑)からも容易に他者への感染が生じる点で、公衆衛生上格段の配慮が必要となります。

*疥癬虫の大きさは0.4mmで、10円玉の平等院の鳳凰の胴体と同じとのことです。じーっと見て鳳凰が識別できる良い視力をお持ちの方は、疥癬が目視できるかもしれませんヨ。

10円玉の平等院の鳳凰の胴体と疥癬虫のサイズが同等とのこと。

10円玉の平等院の鳳凰の胴体と疥癬虫のサイズが同等とのこと。