さて、このコメドを解消するために、最も有効な薬剤がアダパレンという成分で(製剤名はディフェリンゲル)、ニキビ治療の主役となります。

 

ところが、そのディフェリンゲルは、使い始めに一定の割合で刺激症状(皮膚が赤くなたり、乾燥してヒリヒリしたり)が起きやすいのです。

患者さんの立場にしてみれば、このことについて十分な情報がなければ、使い始めに刺激症状が生じた場合、「薬が合わない。」「もう使いたくない。」という感覚になっても当然です。そこで、刺激症状を避け、うまく薬を使いこなすために、スキンケア法や生活指導まで含めた情報伝達をこころがけています。

専門医の立場からすると、ディフェリンゲルを使いこなし、急性期が過ぎてもコメドを防ぐ維持療法として続けていただきたいのですが、最初の刺激症状のためにうまくいかないことがあるのも事実です。当院での事例を分析してみると、そのような状況は、以下の4つに集約されるようでした。

①真冬の寒い時期からディフェリンを使用はじめたケース。

②春先、花粉の飛散する時期からディフェリンを使用しはじめたケース。

③スキンケア(洗顔料や化粧水)製品に、市販の〝ニキビ用″の商品を併用していたケース。

④不適切なスキンケア習慣があるケース。

いずれも、共通項は、“皮膚バリア機能”が低下する条件です。つまり、

①寒冷な気候は、それだけで皮膚のバリア機能を低下させる原因となることが分かっています(ポーラ化成工業株式会社の研究『秋から冬にかけて、肌のバリア機能は急降下 健常肌の人ほど低下度が大きいので要注意』) 。

②また、スギ花粉も花粉皮膚炎の原因となり、直接的に皮膚のバリア機能を低下させます(資生堂の研究『資生堂、スギ花粉が肌のバリア機能を低下させることを発見 』『 Kumamoto J et al. (2016) Archives of Dermatological Research 308: 49-54』)。

③スキンケア製品で、ニキビ用と謳っている商品には、サリチル酸、硫黄、グリコール酸、レゾルシンといった、それなりに角質を除去する有効な成分を含んでいるため、ディフェリンゲルと併用することでバリア機能障害がさらに生じやすくなることが考えられます。

④最後に、不適切なスキンケアとは、皮膚を“擦る”習慣です。ニキビが気になり、洗顔時に強くこすったり、スクラブ入りの洗顔料でゴシゴシ擦ったりすると、皮膚のバリア機能が低下し、コメドの増加につながります。前髪で額を隠すことも悪化因子となります。

こられのことを一つ一つ念頭におき、季節に応じてそれらの対処法をお伝えすることで、ニキビ治療薬を上手にかつ有効に使用していただけば、と思います。